屋外の新鮮な空気を居室内に取り込む状態を「給気」と呼び、居室内の汚れた空気を屋外に排出する状態を「排気」と呼んでいます。
この一連の流れを「換気」と表現しています。
「屋外の新鮮な空気」を居室に取り入れる際、冷暖房を行っているエアコンに対して「換気と熱の関係」が大きく関わってきます。
「熱負荷」は、簡単に言い換えると「余計な熱」の事を表します。
熱負荷について、説明します。
外気負荷
換気のために外気を室内に供給する際に、外気の温湿度と室内の温湿度を等しくするために要する熱
「換気の際に生じる熱負荷」のことを「外気負荷」と考えればOKです。
侵入熱(輻射熱等)
外壁や窓ガラスを通過して流入する熱
人体負荷
在室者の発熱
照明負荷
照明器具による熱
機器発熱
様々な機械から生じる熱
すきま風負荷
扉や窓の開閉によって流入する空気の熱
この様な熱をまとめて、「熱負荷」と呼んでいます。
「外気負荷」が熱負荷としてもっとも影響が大きく、この外気負荷は換気の作用によるものです。
だからといって、換気は法律により定められているので、止めるわけには行きません。
そこで、換気を止めないで外気負荷を抑える方法として、全熱交換機(ロスナイ)や熱交換ユニット(デシカ)等がその代表機器の商品名として市場に出ています。
「室内環境に応じて、フィルターを介し処理された外気を導入し、適切に排出される機能が備わった換気」が効率の良い換気であるといえます。
とはいっても、普段の日常生活の中で、換気について観察することはまずありません。
居室の温度が上下した時、エアコンの温度設定を変えることはあっても、換気扇を「強」に変えたり、窓を開けたりして換気を意識している人はほとんど居ません。
つまり、人の手を介さず「換気設備」そのものの機能が適切に稼動すれば、効率の良い換気ができるのです。
換気扇が油等で汚れた状態だと換気能力が減少し、
給気口から新鮮な空気を引張る力が出なくなります。
また、フィルターが汚れていても換気扇の力が発揮できず、
結果として排気する力が弱まります。
冬の寒い季節に扉を開けると、一気に屋外の冷たい空気が入ります。
給気口のフィルターの抵抗の方が扉の開放よりも大きい為に、
抵抗の少ない扉の開口部の方から室内に入り、換気扇から排出されるからです。
これは特に第三種換気でよく見かけられる光景です。
排気側の換気扇の能力が用途目的以上の能力を持っていると、
給気口側の空気を引っ張る力が余剰となります。
必要以上の換気量になる事もあり、
冬の寒い季節や夏の暑い季節では右図のようなトラブルも起こり得ます。
厨房以外の一般換気扇でも同様の現象が発生する事もあり、
騒音が大きくなるといった現象も生じます。
「最も一般的に採用されている換気の種類は、図の様な「第三種換気」です。
排気側のファン(排気ファン又は、排気用換気扇)から、引っ張られた新鮮な外気は、給気口のフィルターを経由し室内に入り、排気側のファンから屋外へ排出します。
この部屋の圧力は、排気ファンで空気を引く事により、負圧(マイナス圧力)になります。
排気ファンの力(静圧と言う圧力)は、
給気口、フィルター、防虫網やシャッター(逆流防止シャッター)等の全ての力を排気ファンが持っていなければ、換気量としての能力が発揮されなくなります。
「第三種換気」は、負圧(マイナス圧力)が必要な用途、例えば危険物の貯蔵所等で、給気フィルターを介さずに、排気に重点を置くと言った場所では、問題無く機能が発揮されます。
然し営業を目的とした居室では、負圧(マイナス圧)作用の影響により、扉が閉まっている時は給気口から屋外空気が入りますが、扉を開けると扉の開口が給気口よりも抵抗が少なくなり、扉側から屋外の新鮮空気が一気に入り、扉付近で寒暖差の空気影響が大きく生じ、違和感が生じたり、エアコンの動作にも影響を与えます。
更に、給気口のフィルターが汚れて詰まってしまうと、うまく換気が作用しません。
居室に「第三種換気」を採用する際の注意点としては、「給気フィルターの静圧」を、十分把握しておく事が大切です。
「給気フィルター」の汚れ具合により換気量が変動し、出入口の扉の開閉によっても、換気量の増減が左右され、特に扉付近ではエアコンの能力にも影響を与えると言う事を覚えておいてください。
居室内を常時正圧(プラス圧)に保持する環境に、「第二種換気」が採用されています。
クリーンルームや食品工場、手術室と言った居室は、室内の空気圧力を「正圧(プラス圧)」に保つ事で、外部(隣室等)からの空気侵入を遮断する事が可能になり、居室の空気汚染が防止できます。
しかし、給気フィルターの汚染度により圧力変動が生じる為、常に適切な差圧制御(コントロール)が要求されます。
「第二種換気」は一般居室でも一定の外気量を取り入れ、別室の排気口から排出させることで採用することができます。
ただし、フィルターの目詰まりが生じると圧力も低下するので、小まめに清掃する必要があります。
「第一種換気」は、給気と排気の両方に機械(給排気ファン)を設けた、機械換気方式です。
「第一種換気」の特徴は、給気ファンと排気ファンで構成され、室内の圧力を一定(±0)に保持出来る事で、扉の開閉等による影響は殆ど無く、常に安定した換気が可能になります。
とはいっても、給気フィルターの汚れ度が大きくなると、給気フィルターの圧損も大きくなり、給気ファンの風量が下がり気味になり、居室は負圧寄りに移行しますが、「第三種換気」で生じる扉付近の急激な変化は生じません。
給気ファンのコストはUPしますが、外気導入時のフィルターによる粉じん等の除去効果は、「第三種換気」と比較すると格段に違い、換気性能としては申し分ありません。
以上の様な理由からも、第一種換気が最も良い換気だと考えられます。
フィルターが汚れると目詰まりが生じ、抵抗が大きくなった分排気用換気扇の持っている空気を排出する力が発揮されなくなり、換気能力が出なくなります。
扉を開けると開口面積が大きくなります。
開口面積が大きい分だけフィルターよりも抵抗が少なく、そこから一気に外気の空気が吸い込まれ、換気扇から屋外へ一部の汚れた空気は排出されます。
しかし、給気口のフィルターからはほとんど外気が入らなくなり、フィルター周辺の汚れた空気はすぐに排出されません。
フィルターの汚れを洗って落としたり、新しいものと入れ替える事で抵抗が少なくなります。
扉を閉めていると給気フィルター側から新鮮な屋外空気が吸込まれ、換気扇から屋外に汚れた空気が排出され、正しい換気が出来るというわけです。
外気(屋外の新鮮な空気)を取り入れる給気口には、フィルターが取付られています。
しかし、新鮮な空気であってもフィルターが装着されていなければ、空気と一緒に粉じんや花粉、小さな害虫等が給気口から屋内に入ってきます。
これらの侵入を防止する為にフィルターを設けることで、異物が屋内に侵入するのを防止します。
ネット状のフィルターや、不織布で構成されたもの、何重もの層で構成された多種多様なフィルターがあり、用途目的に応じ選定します。
a)プレフィルター(粗塵フィルター又は、前置きフィルター) | |
ファンコイル、エアコン等に使用される目視可能な塵埃を捕集し、洗浄再生能力が高い反面、捕集効率は23%と低いフィルターです。 |
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一般の外気導入等に幅広く採用され、種類としてはPS-600・PS-300・PS-150・FS-1710・FS-1705があります。 平均捕集効率は82%~68%で、初期圧力損失は90Pa~20Paと、用途目的に応じた選択肢が可能です。 |
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サラン繊維(P・Pハニカム)をジグザグ折りにして、アルミ枠で成型されたフィルターです。ろ材面積を増やし、長寿命で、フィルター清掃の頻度を低減することが可能です。 | |
b.中高性能フィルター | |
主としてエアハンドリングユニット等で使用するフィルターです。使用する環境により、捕集効率・洗浄対応型・ろ材交換型の対応が可能です。 処理風量は、56㎥/minと、28㎥/minが有り、捕集効率(比色法)は65% ・90% ・95% の種類が有ります。 |
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c.HEPAフィルター | |
主として手術室、半導体、食品工事等のクリーン度を要求する環境で使用されるフィルターです。 捕集する塵埃は、粒径0.3μm以上を99.97%です。 |
ここでは、外気導入時のフィレドンフィルターについて説明します。
フィレドンフィルターは無方向性の繊維集合体です。
丈夫で効果も大きく、湿度の影響を受けず、耐火性も高いエアフィルタなので、洗浄による再生ができます。
掃除機で汚れを吸い取っても、内部に付着した汚れは全く取れませんので、洗浄の際には強く擦らず、ホースで洗い流す程度で十分汚れは落とせます。
・室内の空気環境を適切な条件に維持させる
・連続換気時に生じる、外気導入時の外気負荷(屋外からの熱)を、換気制御により抑制する
上記が換気制御の目的です。
換気を制御させる事で間接的に熱源エネルギーの消費量を抑え、CO2排出量も抑制する事が可能になります。
その前提条件として大切な事は、「適切な換気が行われている」という事です。
「エネルギー削減」とはいっても、換気能力が満足に発揮できない状態で換気を制御しても効果が薄くなり、逆に健康を害する要因にもなり兼ねません。
まずは、「適切な換気量が維持されている」事を前提として換気制御の話を進めなければなりません。
エアコン(冷暖房)と換気関係について
『エアコンや空調』は、室内の温湿度を維持する目的で稼働します。
『換気』は室内の汚れた空気を排出すると同時に、屋外の新鮮な空気を取り入れる目的で稼働しています。
上記は当たり前な事ですが、この『エアコンや空調』と『換気』は異なる目的で稼働しているにも関わらず、エアコン稼働におけるエネルギー消費に大きく影響を及ぼします。
『換気』の部分を室内の空気質に応じて制御し、室内環境を一定条件範囲で維持することで、ダブルの省エネ効果があります。
『エアコンや空調』はある程度機器本体で制御を行っていますが、『換気』に至っては制御を活用していないケースがほとんどです。
そのような観点から、「換気制御」を採用される事をお薦めします。
1)一般的な換気の運転構成
換気設備の運転構成は、「手動運転」若しくは「自動運転」といった構成です。
換気扇のスイッチを「ON」にすれば換気扇は「運転」し、「OFF」にすれば換気扇が「停止」します。
必要に応じて「強」「弱」の切替を行い、換気扇を稼働させるとスイッチもあり、24時間対応に幅広く採用されています。
一見スイッチでも問題無いように見えますが、換気が必要な時にスイッチを入れ忘れたり、「弱運転」で良い時に「強運転」で稼働させてしまい、外気負荷を大きくさせてしまうこともあり、スイッチの確認は重要なポイントになります。
現状では「スイッチ」を介した換気運転が幅広く採用され、自動制御を採用しているケースはまだ少ないと感じます。
2)換気に自動制御を介入させる理由
換気扇や送風機に対して、『自動制御』を介入させる事で、「適切な換気」が実現できます。
一般的なスイッチ操作では、『換気扇』が連続で稼動している状態だとすると、部屋の人数に関係なく稼働しているので、この換気量分の『外気負荷』が室内に取り入れられた事になります。
『エアコン』は新鮮な空気の導入量に応じ、外気負荷の変化により常に稼働します。
※『外気負荷』とは、屋外から室内に取り入れられる暖かい(冷たい)空気のことです。
もう少し掘り下げて説明しましょう。
①換気量は、在室人員数(1人当たりの専有面積で算出)をベースに、計算されています。
②仮に在室人員数が少なければ換気量も少なくて済み、当然『エアコン』は、外気負荷が少ない状態で稼働する筈です。
③しかし『換気扇』が一定量の換気能力で運転していると、在室人員数の変化に関係無く、一定の外気負荷が『エアコン』の稼働に作用し、人員数が少ない時でも『エアコン』は、常に外気負荷に応じた稼働状態となります。
つまり、
『換気扇が常に稼働していると、人員が少ない時に≪エネルギーの無駄使い≫が生じる』事になります。
こうした現象を防止するには、在室人員数に応じ『換気扇』のスイッチを『On-Off』すれば可能です。
しかし、実際はいつスイッチを切り替えれば良いのかを判断することは難しく、実現不可能な作業です。
そこで、『自動制御』という、便利な物を補足させれば、容易に解決します。
人を目的とした換気量は基本的にCO2濃度が主体なので、CO2濃度だけを対象として考えると、建築物衛生法等では1,000ppm以下と定められています。
そこで、CO2センサー(CO2濃度を計測するセンサー)を利用して、仮に900ppm以下で『換気扇』を停止させ、1,000ppm以上で『換気扇』を運転すれば、在室人員が判らなくても『換気扇』を自動的に運転制御を行う事ができます。
更にCO2の変動と、室内外の温湿度を時系列で計測しておけば、情報としても管理できます。
もう少し踏み込み、『換気扇』と『エアコン』の運転状況をプログラムに組み込めば、『稼働状況』も時系列で判別出来、機器の稼働情報も収集する事も可能です。
このように、人ができない事を『道具』を介すると容易に実現でき、人では『気付かないで、見過ごしている』要因を『自動制御という道具』を介する事で、『エネルギーを、無駄に消費させない設備』が実現できます。