「換気は法律によって決められている」といっても、普段何気なく「換気」 という言葉を耳にしただけでは、「本当っ?」というくらいですね。 しかし実際は「窓や換気」については、「建築基準法」により定められています。 |
これを簡単にまとめると、
ということになります。
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法律で定められた換気量は「法定換気量」ともよばれています。 この法定換気量のことを「有効換気量」と呼び衛生上有効な最低換気量として定められ、同時に「外気導入量」のことを指しています。 |
法定換気量は以下のように定められています。
法定換気量算出 【建令20の2-1-ロ・20の2-2】
V = 20 * Af / N
(*上式の20は20(㎥/h)の事)
V :有効換気量(㎥/h)
Af:居室の床面積(㎡)
N :1人当たりの専有面積(㎡)
建物区分 | 一人当たり占有面積N(㎡) | 備考 | |
---|---|---|---|
レストラン・喫茶店 | 3 | 営業の用途に供する部分の床面積 | |
キャバレー・ビヤホール | 2 | 営業の用途に供する部分の床面積 | |
料亭・貸席 | 3 | 営業の用途に供する部分の床面積 | |
店舗マーケット | 3 | 営業の用途に供する部分の床面積 | |
ダンスホール・ボウリング場 | 2 | 営業の用途に供する部分の床面積 | |
旅館・ホテル | 10 | 営業の用途に供する部分の床面積 | |
集会場・公会堂 | 0.5〜1 | 単位当り算定人員と同時に収容し得る人員 | |
事務所 | 5 | 事務室の床面積 |
1) N値について
一般居室(10を超える時は、10)
特殊建築物の居室(3を超える時は、3)
2) 20の値について
20㎥/h・人で、最低換気量として、一人当たりの時間単位です。
条件によっては、25、30㎥/h・人等の値で算出します。
前章で触れた中央管理方式の空調について下表にまとめておきます。
項目 | 基準 | 備考 | |
---|---|---|---|
浮遊粉塵量 | 0.15mg/㎥以下 | - | |
一酸化炭素の含有量 | 10 ppm以下 | - | |
二酸化炭素の含有量 | 1,000 ppm以下 | - | |
温度 | 17℃~28℃ | 居室温度を外気温度より低くする場合は、差を著しくしない事 | |
相対湿度 | 40%RH~70%RH | - | |
気流 | 0.5m/sec以下 | - | |
ホルムアルデヒドの量※ | 0.1mg以下(空気1㎥につき) | - |
前章で触れた機械換気について具体的に説明していきます。
このように、機械換気には第一種から第三種の3種類の換気方式があり、目的や用途に応じ換気方法を選択することで、適切な換気を行うことができます。しかし、残念ながら目的や用途に沿わない選定をしてしまうと、多くの不具合が生じます。
換気は外気(屋外の空気)を取り入れるものなので、暑い季節や寒い季節では外気そのものが大きな熱(熱負荷)となって室内に入ります。その結果エアコンの稼働に大きく影響を及ぼします。
また、屋外の空気を直接室内に取り込むと、屋外のホコリ・粉じん・害虫なども簡単に入ってしまいますが、その点に関してはフィルターを介することでホコリ等の捕獲ができ、空気の清浄度が保たれます。
「火気を使用する換気」についても「自然換気」と「機械換気」があります。
一般的には「機械換気」が多く採用されているので、ここでは「機械換気」について説明します。
火気を使用する部屋の換気量(要求換気量と言います)は、以下の種類に分類されます。
燃料の種類 | 理論廃ガス量 | |
燃料の名称 | 発熱量 | |
都市ガス | 46~19MJ/㎥ | 0.93㎥/kwh |
LPガス (プロパンガス) |
50.2MJ/kg | 0.93㎥/kwh |
灯油 | 43.1MJ/kg | 12.1㎥/kwh |
1)V=40kQ
2)V=30kQ
3)V=20kQ
4)V= 2kQ
V : 要求換気量(㎥/h)
k : 理論廃ガス量(㎥)
Q : 燃料消費量(㎥/h)又は、(kg/h)
火気を使用しない電化厨房については法規制はありませんが、熱・水蒸気・臭気等の排出のための換気量としてミニキッチンでは200㎥/h以上、一般家庭用の電化厨房器具では300㎥/h以上の換気が望ましいです。
1)V=40kQ | |
もっとも一般的な換気方法で、天井換気扇や壁掛け換気扇が、このV=40kQの換気量にあたります。 ここで特に注意が必要なのは、天井下:80cm以内に換気扇等を設けなければならないと言う点です。 コンロに近いからと言って、天井下から80cm以上になっていると、イエローカードになります。 |
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2)V=30kQ | |
排気フードⅠ型と言う、ややこしそうな排気フードが現れましたが、一般的なレンジフードや、排気フードと思ってもらえれば良いでしょう。 但し、コンロ台の上部からフードの下部迄の距離は、1.0M以内で、不燃材(鋼板等)で無ければ、イエローカードです。 この内容に沿っていれば、V=30kQの換気量で満足出来ます。 |
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3)V=20kQ | |
排気フードⅠ型と違って、制限を設けたフード(水平面に対して10°以上で、下部が5cm以上の垂下がり部を設けたもの)です。 コンロ面からフード下部迄の距離をH=1.0M以内におさめ、フードの側面と火源の距離がH/2以上になるフードを、排気フードⅡ型と定義されたフード(勿論不燃材です)です。 これを用いた場合は、V=20kQの換気量で満足出来ます。 然し、この定義に沿っていなければ、やはりイエローカードにあたり、V=30kQを採用しなければなりません。 |
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4)V= 2kQ | |
このケースは最近ではあまり見掛けられませんが、給湯器などではこの換気量(V=2kQ)が採用されます。 燃焼器具と換気扇等が煙道(ダクト等)を介して、直接接続が必要なければ、当然イエローカードです。 この場合の換気量はV=2kQになりますが、注意しなければならない点は、1)~4)の給気口から確実に換気量に等しい給気量が導入されなければならないということです。 |
シックハウス対策の背景として、住宅の高断熱・高気密化が進み、自然換気量が減少し、居室の換気量は必要最小限まで削減されたことが挙げられます。 住居以外の建物では、外気負荷(屋外の熱による損失)の軽減策として、エネルギー消費量を削減する目的で、換気量が削減されてきました。 その一方で建築部材の耐久性を向上させ、施工もしやすく、安価に製造できる、等の利点からホルムアルデヒドや揮発性有機化合物などの様々な化学物質を含んだ建築部材が幅広く使用される様になりました。
その結果、建材に使用された化学物質が居室に放散され、室内の空気質が汚染されるようになりました。
換気量の減少と、化学物質を使用した建材の増加が要因となり、居住者が高濃度の化学物質にさらされ「めまい・吐き気・頭痛・目・鼻・のどの痛み」などの症状を訴えるといった、健康被害が問題視されるようになりました。
海外では1980年頃から、シックビル症候群(SBS)として問題になっていましたが、日本では16年遅れの1996年頃より住宅を中心とした「シックハウス症候群」として大きな問題となりました。
それを受けて2003年7月1日に「改正建築基準法」が施工され、28条の第3項に「換気量の確保」と「クロルピリホスの使用禁止」や「ホルムアルデヒドを発散する建材の使用規制」といった、シックハウス対策が義務化されることとなりました。
シックハウス対策の換気量は、簡単には説明しづらいので、さらりと解説しておきます。
建材等のホルムアルデヒドを発散する内装仕上げ材の使用面積に応じて、換気回数(時間単位の空気の入れ替わり回数)が求められるようになっています。
住宅の居室は、換気回数0.5回/h以上の換気量を持つ換気設備を設置することが、建築基準法令で義務づけられています。
住居以外の居室では、換気回数が0.7回/h以上の機械換気設備を設け、換気量が確保されている居室は、天井高さに応じて換気回数が定められています。
ホルムアルデヒドを発散する建材を、使用しない場合に於いても、家具等からの発散が有り、換気設備についての、ホルムアルデヒドに関する法第28条の2第3号で、定められた技術基準により算出する方法としては、以下の様な計算方法です。
原則としてすべての建築物に機械換気設備の設置が義務付けられています。
この目的は、ホルムアルデヒドの発散が、室内の内装仕上げだけではなく、居室内の家具や什器、生活用品等からも発散する恐れがあるためです。
その目的により、住宅等の居室では0.5回/h以上、その他の居室については0.3回/h以上の機械換気設備を設け、前述の換気回数を24時間連続的に稼働させる「24時間換気」が用いられています。
(建基法の規定換気回数は、天井高さ2.3mを想定して定められていますが、居室の天井高さに応じて必要換気量が異なり、更に機械換気設備の換気回数によっても天井髙さにより、必要換気量が異なります。)