換気は室内の汚れた空気を排出し、屋外へ排出された空気の量だけ、屋外の新鮮な空気を取り込み、室内の空気の清浄度を保つための機能です。
しかし、汚れた空気を排出したといっても、排出された空気が再度外気として入って来たのでは、まったく換気としての機能は果たされません。
簡単に空気の流れを描いた図を下記に載せます
例えば左右に住居を配置してみると、どうでしょうか?
左の住居では問題無く排気された空気が、右の住居では給気として取り込まれています。
この状態では、右の住居では換気をしている意味がありません!
上の図は極端な例ですが、実際によく似た状態で換気が行われているケースもあります。
そこで、換気の計画を立てるには、
給気から排気までの空気の流れ(換気経路)を考える必要があります。
使用目的に応じて換気ルートを構成する事で、外気負荷(屋外の余分な熱)を抑え、効率的な換気ができます。
左の図のようにコンロ台があり、火気使用時の換気が必要な場合は、このように室内の換気を分けます。
右の厨房用コンロ台に単独の換気を設け、左のエリアでは人を対象とした換気を構成する事で、エアコンへの外気負荷(屋外の余分な熱)やコンロ台からの熱負荷も少なくなり、換気の効率が良くなります。
法定換気量は建築物の用途に応じ、一人当たりの専有面積(一人が専有する計算上の面積)により、算出するものですので、換気量は建物によって違います。
店舗・マーケットでは、一人当たりの専有面積Nは、3㎡/人です。
(仮に、200㎡の店舗だとすると、V=20Af/N=20×200/3≒1,340㎥/h が、換気量になります。)
一方、同じ面積の事務所では一人当たりの専有面積Nは、5㎡/人ですので、
(V=20Af/N=20×200/5≒800㎥/hの、換気量で済みます。)
計算時に、N値(一人当たりの専有面積)を間違えると、イエローカード程度の問題では無くなりますね。
しかし、こういう事は無いとは言い切れません。
一般的なトイレの換気量は、1㎡当たり30㎥/hで算出します。
(換気回数で求める場合では、大便用:10~15回/h、小便用:5回~10回/h程度として求める方法もあります。)
手洗い場や洗面所の換気量は、1㎡当たり10㎥/hで算出します。
(換気回数で求める場合は、5回~10回/hとして求めます。
一般の居室とは異なり、目的用途に応じ換気量を算出しますが、機械室等の場合は「熱計算」によって算出する方法と、単に換気回数で求める方法がありますが、大きい方の値を換気量とするのが良いでしょう。
熱計算で求める方法
Q = 3.6qs / { CP × ρ × (ta-to)}
換気回数で求める方法
Q = A ×h×n
室名 | 換気量 | 換気方式 | 許容温度 ℃ |
圧縮冷凍機室 | 5回/h | 第一・三種 | |
バッテリー室 | 3~5回/h | 第一・三種 | |
自家発電室 | 50回/h・熱計算 | 第一種 | 40℃以下 |
(非常用) | |||
ボイラー室 | 10回/h・熱計算 | 第一種 | 40℃ |
直だき冷温水機室 | |||
吸収式冷凍機室 | 5回/h・熱計算 | 第一・三種 | 40℃ |
電気室 | 20~30回/h・熱計算 | 第一・三種 | 40℃以下 |
冷房併設(3~5回/h) | 自然 | ||
エレベータ機械室 | 熱計算 | 40℃以下 | |
ロープ式:20~30回/h | |||
油圧式:100~150回/h | |||
コージェネ等が常時運転される発電機室 | ディーゼル:100回/h | 第一種 | 40℃以下 |
ガス:120回/h | |||
ガスタービン:160回/h | |||
熱計算 | |||
コンプレッサー室 | 熱計算 | 第一種 | 40℃以下 |
興行場の客席を対象として、各都道府県の条例で定められています。
一例として以下に記載します。
都道府県条例 | 方式 | 換気量(外気量) | 換気方式 |
東京都条例 | 機械換気 | 75㎥/h・㎡ | 第一種~三種 |
空調時 ※ | 25㎥/h・㎡ | ||
大阪府条例 | 機械換気 | 60㎥/h・㎡ | 第一種~三種 |
空調時 ※ | 30㎥/h・㎡ |
※ 空調送風機量は、熱負荷による
注意しなければならない点は、
建築基準法の換気量は法律上の「最低換気量」です。
各都道府県・市等が独自で定めている「条例」に従い、換気量の算出方法も変わります。
どちらが優先されるのかと言えば、各都道府県・市等の「条例」が優先されます。
法定換気量で算出した換気量だからと言って、
各都道府県・市等の「条例」で定められた換気量に満たなければ
、イエローカード
になります。
ここに記載していない施設の換気量の制約も、目的用途に応じてたくさん有りますが、一つの参考としてください。
エアコン
は、室内の空気を暖めたり冷やしたりする
温度を対象とする機器です。
「除湿機能」を備えた機器や、「換気機能」を備えた機器も、実際には市場で販売されていますが、あくまでも「家庭用」としての範囲です。
しかし、「換気機能」が備わっているからといって、換気扇を無視する事は絶対に出来ません。
キッチンやトイレでは換気が重要になり、キッチンではガスコンロがあれば、当然「火気使用器具」の制約を受け、適切な給気が必要です。
例えばトイレでは、必要換気量として1㎡当たり30㎥/h程度の換気量が必要になり、その換気量に応じた給気(外気)量が導入されます。
エアコンの換気機能があったとしても不足する場合も多々あり、エアコン本体が換気モードに設定されていなければ、換気が行われない可能性もあります。
「エアコンは温度を対象とした機器で、換気は居室の空気を入れ替える機器」として捉えると良いでしょう。
家庭用以外を業務用として考えると、「エアコンは温度を対象とした装置、換気は居室の空気を入れ替える装置」として、完全に独立しています。
エアコンは、室内で発生する熱(人の動作による熱や、照明や器具の発熱)、外壁や屋根、窓等の輻射熱、更には換気時の外気負荷による居室内の温度が上昇(もしくは下降)に反応して居室温度を制御します。
一方換気は、一般的にはスイッチを投入(ON)すれば換気機器が運転を開始し、屋内の汚染空気が排出され、その量に等しい屋外の新鮮な空気をフィルターを介し居室内に吸い込み、常時換気が行われます。
この様に、エアコンと換気は全く異なる働きをしています。
普段何気なくエアコンと換気を運転している訳ですが、ここで少し気がかりになる事があります。
「エアコンは、自動的に温度を一定に保っている」
「換気は連続して稼働している」
この「自動で動くエアコン」と「継続的に動く換気」のミスマッチに関しては、後ほど説明していきます。